PUBLIKATIONEN
Institut for Visual Profiling & Visual Resources Development
 

 

Richard Schindler
UNDERSTANDING LANDSCAPE.
Industrial Architecture and Landscape Aesthetics
in the Black Forest (in german)
2005
284 pages, 107 col. and 110 b/w illus., 2 fold-out pl., 27 x 21 cm, hardcover, sewn binding, dust jacket
Price: 36 euros
ISBN 3-937014-30-6
 

景観の理解:工業建築と景観美を検証する

                ---ドイツ“黒い森”景観裁判をめぐって」(仮称)翻訳版」

原著者:リヒャルト・シンドラー(視覚芸術、芸術哲学Institute for Visual Profiling & Visual Resources Development, The University of Applied Sciences, Basel - Department of Art and Design (Hochschule für Gestaltung und Kunst, HKG Basel)

出版社:(株)エヌ・ティー・エス 2007年春出版予定 カラー写真107、モノクロ写真110、折り込みカラー写真2

 

(原書タイトル「Landschaft verstehenIndustrialarchitektur und Landschaftästhetik im Schwarzwald

Author: Richard Schindler  Modo Verlag,2005 Oct.286pages

 

それは「黒い森」に建てられた、2基の風力発電撤去の可否をめぐる裁判から始まった------

この裁判の鑑定を特別に委託されたのが視覚芸術家リヒャルト・シンドラー(著者)である。シンドラーは驚くほど精緻な美学的分析と客観的・科学的な手法を駆使し、世界初の景観分析法モデルを確立した。本書は多くの貴重な事例分析を取りあげ、これを体系的に網羅したものである。

 

 景観を解釈することは果たして可能だろうか? 森とは何なのだろうか。

もし可能だとしたら、その解釈や認識の過程は、われわれの中でどのように形成されていくのであろうか----。実際、景観を解釈することは、これから建設される建物が、その場所にどのような影響を与える評価する上で不可欠である。さらに景観保護に関する最新の基準や規定を考慮する場合、なおさら重要になってくる。本書ではまず、芸術と科学の両視点から、景観イメージがどのように理解し解釈され、どのように美的評価されるべきかについて述べる。

 景観に対して工作物がおよぼす影響がどこまで許されるかについては、今や世界的に議論されているテーマである。たとえば山間に建てられたホテルのビル群、田園地帯にそびえる風車、森林地帯に敷かれた自動車用道路といった工業発展の産物について、今や我々はその美的価値を検証しなければならない状況に立たされている。同時に、景観の「美的価値の損失」を具体的に評価する方法はあるのか、景観保護の進歩や景観価値を評価する客観的な基準はあるのか、そして何よりも「無傷の、損なわれていない景観」を我々はどう認識し、またその認識を決定するものはいったい何なのかという疑問が存在する。

これら数々の疑問に答えるために、本書では既存の多くの景観評価方法を厳しく検証し、それに代わる、新しい最適な評価方法を提案した。

 渦中の工業建築物、2基の風力発電用の風車に関しては、名勝「黒い森」に、自然に馴染まないコンクリートの外観をもった建物を建設したためにその美的価値が問われている。景観に影響を及ぼす可能性のある建設計画がある場合、今後は同じように検討がなされるべきであろう。

 また、企業と芸術が協力活動を行う場合、昔からスポンサー活動、芸術作品の収集、アートを取り入れたオフィス環境、などに限られてきた。本書では、企業が企業目的をさらに推進する上で、芸術家の知覚力と経験がいかに実用的かつ営利的にも役立つかを述べる。

 

 

日本語版出版の意義 Why Japanese version?

シンドラー氏の問題提起と手法は世界でも初めてであること、またここで取り上げられた事例が環境先進国ドイツの名勝地として名高い「黒い森」で起こった裁判に基づいている点で興味深い。

 また、誰もが「環境にやさしい」エネルギーとして設置された風力発電が、皮肉にも実は住環境に悪であるという、非常に新しい深刻な問題提起がなされた点が注目に値する。本書はその裁判のための鑑定書として執筆されたものであるが、視覚、認識のメカニズムを含む美学的な問題のみならず、過去の名画、風景、工業建築の詳細を新しい手法で評価した試みとして、今後も応用が期待される。

 なお、日本における風力発電(ウインドファーム)設置をめぐって、すでに環境論争に発展している事例も少なくない。今後の日本におけるエネルギー問題、そして景観とは何かを改めて検証するにあたって、本書のユニークな問題提起は重要である

Translated and informed by Masami Matsukaze, NTS Inc.